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デザイン探検家の記録

八ヶ岳雪山行 東天狗岳と本沢温泉

新年1月10日から12日まで八ヶ岳に山行に行ってきた。
ゆったりペースで雪上訓練と東天狗岳へ。
気温も最低マイナス10度程度でそれほど冷え込まず、
リフレッシュには良い雪山だった。



今回は雪山装備を新たに購入。


BLACK DIAMONDのアイゼン 「セラックストラップ」ピッケルは「レイブン」。
アイゼンはステンレス製のもので錆びない。

初日の夜はすき焼き。

卵も一人2個ずつで贅沢をした。



今回のメインイベントで登頂は東天狗岳

山行二日目の午後。


天気は良好。

山頂の景色

天狗岳登頂前に黒百合ヒュッテ前の斜面で雪上訓練を行う。
主に滑落停止。
雪がふわふわで柔らかいので転がっても痛くなかったが、
カリカリのアイスバーンのほうが訓練にはなったと思う。
今後はもっと練習が必要。


訓練を行った斜面。



本沢温泉の露天風呂
日本最高地にある露天風呂だそう。

雪で着替えがすごく寒く、お湯もぬるめ。
湯につかっていると、頭に雪が積もっていく。


本沢の登山口からさらに小海線海尻駅まで歩く。

未来はもう始まっている。

「未来はもう始まっている」
この言葉の主は野宿や山などを時々ご一緒させて頂いている、
植村直己賞も受賞したことのある冒険家の安東浩正さん。
安東さんの著書にサインをお願いした際、添えてくれた言葉。
未来は「今この一瞬」の積み重ねの上にあることにハッと気付かせてくれる。


2010年、世界は新年を迎えた。


新聞やテレビなどのマスコミはいっせいに一年の動向を予測し、
世界の未来を論じ始める。


私達プロダクトデザイナーは日々半年から二年先の製品をデザインしている。
常に製品が売り出される時の、ユーザーの価値観や世間の動向を意識しながら。
そしてユーザーが製品を使う時のことを考えながら、
製品本体やキー、ディスプレーの形状など製品の細部を
0.1mmの精度、時としてさらに細かくデザインしていく。


新製品には従来無かった機能などが盛り込まれており、
製品を使うユーザーは新しいライフスタイルがスタートする。
例えば、今では当たり前となった携帯電話のカメラ機能。
これも10年前には存在しなかったし、その必要性も感じられなかった。
しかし実際に携帯の機能として普及すると、
様々な写真をリアルタイムで送信するなど
ユーザー自身が新しい使い方を見つけだした。
文字と画像、そしてリアルタイム性が複合的に組み合わさり、
従来無かった新しい魅力を持つコミュニケーション手段に成長している。
電話とメールにビジュアル情報を付け加え、
より多彩なモバイルコミュニケーションを実現し、
今では携帯電話に無くてはならない機能の一つである。


おそらく開発者はそこまで生活のなかで使われるとは
思っていなかったのではないだろうか。
開発者の意図を超え、ユーザーが道具を使いこなす。
そして一つの生活様式を作る。
売れる売れないを通り越し、ここまで来ると製品の開発者としては本望だろう。
そして未来の生活は昨日よりも一歩、明るく、快適になっていると私は信じる。


私達プロダクトデザイナーが作ったものが、
数ヶ月から数年先の未来の人々に使われ生活に浸透していく。
おおげさに言うと私達が日々行っている、
「今のこの瞬間」の仕事は未来の世界中数万という人々の生活を作る。


「未来はもう始まっている」
私はプロダクトデザイナーと言う職業人の立場から、
人々の未来を作ろうと新春に誓う。

【書評】最後の冒険家

最後の冒険家

最後の冒険家

野外業界の情報通として一部の業界人の中では
有名な藤本氏からの推薦を受けて課題図書としてしばらくお借りしていた。
藤本氏「思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ凡人の日々」と言うブログを書いておられる。
以前は「思考の7割と収入の3割を旅に注ぐ旅人の日々」というブログだった。
いつの間にか「旅人」から「凡人」降格してしまわれたが、
情報通としての敏腕ぶりは衰えることを知らない。


それで本書の内容は、
神田道夫氏による熱気球による太平洋横断の記録を
第一回目の遠征のときに同行した石川直樹氏の目から描いた作品である。


神田氏の行動の記録を熱気球以前の筏下りにまで遡り、
氏の冒険に対する好奇心や行動力を示している。
気球と出会い、あっという間に冒険飛行にのめりこみ
富士山越えにはじまり長時間飛行記録や高度記録、数々の記録を打ち立てた
神田氏の行動力を淡々と描いている。


氏を語るときにこの行動力は外せない言葉だ。
気球を始めてから、冒険飛行に乗り出すまで、先輩を追い越し、
ほとんど迷うことなく一直線に進んでいる。


神田氏による太平洋横断に至る経緯やプロジェクト全体の人の関わり、機材、
冒険家として、また人間、父や夫として神田氏の性格が、
石川氏の目を通じてよく描かれている。
直感で冒険を成し遂げていくタイプで、
今の時代には稀な人だったのではないかと思う。


この作品は開高健ノンフィクション賞を受賞している。
石川氏はプロジェクトに最も近くで関った一人の青年として、冒険にかける仲間として、
確かにこの記録をまとめるには適任だったのだと読後に思った。
プロジェクト全体を客観的に淡々と追いながら、
最終的に太平洋上で行方不明になってしまったあたりでは、
石川氏の神田氏に対する尊敬の念や愛情のようなものが伝わってきて、
押し殺していた感情がいっきにあふれるが如く感動的ですらあった。


私は冒険家である安東氏の紹介でこのプロジェクトに気球製作で関わっていた。
スターライト号の名前や色の由来は制作に携わりながら知らなかったが
この本で知ることが出来た。
そのエピソードだけでも神田氏への愛おしさが湧いてくる。


工学士でもある安東氏によると、
このプロジェクトの失敗の原因は気球の構造や強度の問題もあるという。
計算で出せる問題点に対し、なんら対策を打たなかったとスターライト号に対して語っていた。
気球を操縦することと、設計することは違う。
操縦に関しては超一流のパイロットであったと記録が証明している。


このプロジェクトの一部に関りながら、全体を知らなかった私には
プロジェクト全体を俯瞰する良い資料になった。
安東氏をはじめ関った人々の意見を聞く上での分かりやすいフォーマットになったと思う。

あのプロジェクトが成功していたら。
「たら、れば」は命をかけての冒険には全く無意味だ。
冒険は生きてこそだ。


横断できる可能性は有っただろうが、
到達できない可能性もあった。
リスクを極限まで減らすことが必要だったのかもしれない。
機材にしても、メンバーにしても。
リスクを残したまま、突っ込んでしまった感は否めない。


冒険には危険を犯し、行動していくことで、達成できる面がある。
むしろ、挑戦する行動力がないと冒険は成し得ないだろう。
しかし、行動力だけでは命をかけたギャンブルになってしまう。
リスクを最小限にし、成功する可能性を最大限にするための準備が必要だ。
この二つのどちらかが欠けた時、冒険は運まかせになってしまうのだ。
何かに兆戦するときには、肝に銘じたい重要な二つのエレメントだ。


このプロジェクトを通じ「冒険とは何か?」「生きることとは何か?」
と言うことについて考えざるを得なかった。
この本はわだかまっていた部分を分かりやすく解きほぐしてくれた。

北岳山荘幕場から見た富士山

2009年10月12日朝5時過ぎ
北岳山荘にある幕場に幕営する。

朝、目が覚めてテントから顔を出す。
目の前に広がっていた美しい景色に眠気も吹き飛ぶ。


食事の準備をする為、SIGGのガソリンストーブに火をつけ
プレヒートを行う。
揺れる火越しに、雲海に浮かぶ朝の富士山を見ながら、
自然の中に身を置く幸せのひととき。
静かに日が昇っていく。

沸かした温かい飲み物を飲む。
少しずつ身体の隅々が活動し始める。


一日の始まり。
至福のとき

【書評】目立つ力

目立つ力 (小学館101新書 49)

目立つ力 (小学館101新書 49)


自己実現のためにブログの効果を最大限発揮したい人には、便利な一冊。
一冊にまとまっているので、勝間さんのよく言う「パッケージメディアとしての本」
としては、費用対効果が高いだろう。


昨夜、早速渋谷ブックファーストに行ってチェックした。
勝間本最新刊と言うことで、大々的にPRしてあるかと思いきや、
新書コーナーに普通の扱いだったので探すのに若干時間がかかった。
しかし目の前で一冊買って行く人がいてやはり注目はされているなと言う印象。


内容はネットメディアを通じて自分自身を成長させたい人に対し、
確実に成果の出る押さえるべきポイントを体系的に記してある。


ネットの可能性と自分自身の成長をリンクさせ、
最大限の効果をもたらすツールとしてブログを駆使する。
その為のノウハウを一つずつ丁寧に書いてあるので、
ブログのアクセス数や有益な人との出会いを求めるような
具体的目標を持つ人には役に立つだろう。


主にブログについて
「文章の行間を空けること」、
「タイトルや最初の二行に気を使うこと」、
「読み手への感謝を込める」など
当たり前のことだけど実践していくことで
着実に効果が現れそうな内容が満載だった。

本書後半の対談は小学館の特設サイトで読める。
若干の編集はあるがほぼ同じ内容。

ネットの本だけあってサイトも充実しており、
勝間さんのITグッズなどを本書と併せて見ると面白い。


ただ、ブログには自己の成長を加速させると言う側面もあるが、
自分自身の個人的な記録や楽しみとして考える人もいると思うので
そういう人には余計なお世話かもしれない。


勝間さんはネットを通じて、自分の能力を最大限に拡張してきたんだろうなと思わせてくれる一冊。

WEB版「岳人」

http://www.tokyo-np.co.jp/gakujin/club/clb2009071402.html


以前、山岳雑誌「岳人」で紹介された厳冬期の八ヶ岳の写真。
岳友、わとそんさんが応募してくれたのですが、
webにもアップされていたので紹介してみます。


山は知れば知るほど、追いかけたくなってくるから不思議。
人はなぜ山に登るんでしょうね。


イギリスの登山家マロリーは
「そこに山があるから」
と答えていますが。


いつかは必ず死をむかえるのに、なぜ人は生きるのか。
と言う質問にも近い、普遍的で哲学的な命題ですね。


最近「神々の山嶺」という夢枕獏の山岳小説を読みましたが、
どうして人は山に登るのかを問い詰めているようでした。

結局、人生のように多様で、答えは一つではないのかもしれませんね。

自然は美しいけれど、人に容赦はしません。
優しいときもあるけれど、時として非情なほどに冷酷に人の命を奪うこともあります。
そんな時、人はきっと自然の厳しさをただ受け入れるしかないのかもしれませんね。


でも、人類の歴史を見ればわかるように、
人類史は自然との共存と抵抗の歴史でもあります。
家を建て、狩猟をし、土を耕し、住む場所を変え、厳しい土地へ適応していきました。
北極圏に住む人々や、砂漠に住む人々、海に住む人々、
厳しい自然の中に住む人間の逞しさは自然との共存と抵抗の歴史です。


山に入ると、人間の小ささを実感すると共に、
小さな自分が大きな自然に抵抗しようとする生命力を感じます。


切り立った長い稜線を小さい人間がちこちこと歩いていく様子は、
大自然と対峙する人間の意思が見えてきて、かっこいいものです。



山のように大きくて個人の力では、どうしようもない存在がある。
それでも自分の意思で立ち向かっていく。
そんな人の後姿は何をやっていてもやっぱりカッコイイですね。

マンガ「岳」の作者 石塚 真一さんのサイン会

岳友 藤本さんのお誘いで石塚さんのサイン会に行ってきた。

石塚さんの気さくな人柄は三歩さんを思い起こさせる。
先日、剣岳に行ったときの日焼けのおかげで、どこの山に行ってきたんですか?と石塚さん。

サインの最後にこういう人には

「お気をつけて」

と言うメッセージを書いてくれる。

三歩さんがいつも遭難者に言う「よく頑張った」って書いちゃうと調子に乗ってどんどんエスカレートしていきますからね、なんて石塚さんは言っていました。

明るく山屋らしい、豪放磊落な感じは裏表がなく、接していて気持ちの良い人でした。