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デザイン探検家の記録

Great designer 柳宗理

3月24日、柳宗理氏を送る会に参列してきた。
柳氏は戦後工業デザインのパイオニアとして活躍してきた人で2011年12月25日に96歳で亡くなった。

戦時中にはフィリピンのジャングルで建築家コルビジェの本を背負って駆け回り、
いよいよ体力尽きて、土にその本を埋めたという逸話には感銘を覚えたものだ。


柳氏のことは1998年に4月から6月までセゾン美術館で行われてた「柳宗理のデザイン」展で初めて知った。当時の私は、美術大学のプロダクトデザインコースに入学したばかりで、ファインアートとデザインの違いすらも曖昧な学生だった。それでも、機能を研ぎすましてできた造形や、どこか日本的でふっくらとした豊かな造形には美しさを感じた。貧乏学生が背伸びして買った展示のカタログは今でも手元にある大切な本だ。


大学一年生の時には木でスツールを制作する課題があり、
私はエレファントスツールに影響を受けたものも作った。そして今でも使っている。

四谷の事務所にも何度か訪れたことがあり、
当時、柳氏のジープとビートルが駐車してあったのが印象的だった。

14年間、自分が迷う度に柳氏の仕事に触れ、自分のデザインを顧みて反省し、
少しでも良いものを作れるように、もがきながら、進んできた。
自分の仕事を探り深めるほどに、柳氏の仕事の凄さがわかってくる。

氏はどこまでも遠い存在だ。
消費を促すために差別化を図るデザインではなく、
使う人のことを第一に考え、道具としての本質を追究した美しさ。


祖父と孫ほど年の離れた師匠。
戦後の経済発展の中で、柳氏は自身のデザイン哲学を見失うことなく追求し続けた。
「先人の教えと自ら時代を切開く力」は、地図と前進する脚のようなものだ。


戦後の工業デザインの先駆者、柳宗理氏の後を追い掛けながら、
現代の刻一刻と変化する世界をデザインで切開いていく。
「今、この日本で、アジアで、世界で、本当に良いデザインとは何なのか?」
「本当に良いデザインとは何なのか?」と言う問いに対し、
この時代の答えを探さなければいけない。


その答えを考え、デザインで表現すること。
柳宗理氏の偉大な仕事と時代を振り返りながら、
この時代に生きる、自分のデザインを追い求めると胸に誓う。