Map of days

デザイン探検家の記録

【書評】 実戦主義道具学

実戦主義道具学 (ワールド・ムック (508))

実戦主義道具学 (ワールド・ムック (508))

全天候型ライター、ホーボージュン氏によるアウトドア用品のブランドストーリをまとめたエッセー集。
40もの道具を紹介しながら、著者と道具のかかわりをモノへの愛情とウィットにとんだ文章でロマンチックに語っている。一つひとつの文章はテンポが良く、軽快で切れがあるため、飽きずに次々読み進められる。

なかでも気に入った台詞に、DANA DESIGNのバックパックの紹介で「肩に食い込むパックの重さは自由の重さなのである」という句がある。
自分自身重い荷物を背負って、野山を気ままに旅してきた。バックパックの紹介を通じて、快適な旅よりも自由をむさぼるような旅人の気持ちをここまで的確に表現したものは無いのではないだろうか。背負った荷物と健康な身体さえあれば今から進む道はどうにかなる。どこに行っても生きて行ける。そんな自由を背負うと言う贅沢だ。重いパックを背負って家を出るときの開放感、高揚感、はこの文章に集約されるのではないか。


一つひとつの道具の紹介はスペックを含め細かく解説されており、またフィールドでの気付きが道具選びにフィードバックされている点は納得、感心する。
モノへの愛情にあふれた著者の文章は、それを開発した人々への敬意とモノへ愛着で満たされている。著者は道具を大切にでも徹底的に使っている。こんな風に使ってもらえたなら使い倒された道具達もきっと本望だろう。ものづくりに日々従事している立場から理想的な道具と人との関係を垣間見た気がした。
そういった意味ではアウトドアで展開される、人と道具の理想的な関係を描いたエッセーと言える。