銀座線渋谷駅の改札を出たところにある、床に埋め込まれたフロア案内の数字。
真鍮の文字が通過していく人々の足に削られ、表面が緩やかに曲面を描いている。
周辺のタイルは、よりいっそう削られて、文字だけが表面張力のように立体感をもって浮かび上がっているよう。おそらく数十年という長い時間の中で出来上がったであろう形態の美しさは、当初の作り手の意図をはるかに超えて生き生きと伝わってくる。
金属なのにやさしい質感をもった美しい数字。
簡単には作ることの出来ない、時間の造作。
携帯電話を筆頭に現代のプロダクトのライフサイクルはものすごいスピードで進んでいる。
競合ひしめく国内市場は、新しい価値観を生み出すために疲弊している様にもみえる。
そんな中、長い時間をかけて生み出されたこの数字は、
柔らかな緊張感を持って新しさとは何かを問いかけてくれる。