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デザイン探検家の記録

第31回アクシスフォーラムの感想 

第31回 田川欣哉 講演会
「デザインエンジニアリングの可能性」
http://www.axisinc.co.jp/publishing/forum/31.html




takram http://www.takram.com/ の田川氏の講演会場にはおよそ100人以上と見られる人が参加していた。来場者の8割方は男性で学生も沢山いた様で、先進的なデザイナーへの感度は学生や若い人のほうが高いようだ。


しかもtakram自身は学生達のインターンシップを多く受け入れており、デザインとエンジニアリングの狭間で迷っている学生達が、二者択一で迷わなくても済むような、ものづくりの社会を築くことを一つの使命としている会社である。


その製品開発の特徴は、スケッチを描くことよりも、プロトタイプを製作することに重点を置いている。実動するモックアップはどんな説明よりも説得力がある。そして言葉での説明よりもモックにより体験を提供することで、特に企業の経営者に向けて製品の意図を明確に伝達できるという。
確かにデザイナーでもエンジニアでもない経営者は言葉やスケッチだけではその製品を想像できないことが多い。そして言葉での説明は時に誤解を招く。その点実動モックアップは、その物ずばりなので、誤解を招きようがないし、言葉での説明も不要である。


takramはソフトウェアとハードウェアのデザインとエンジニアリングを同時に手掛けていく会社である。しかもチームのメンバー全員が、得意分野はあるものの、その全てを遂行していく能力を持つという。完全な分業化は行わず、様々な能力を持つ個人個人が領域を跨りながらチームワークを行い、製品開発に相乗効果を生み出しているようだ。


プレゼンテーションでは田川氏が学生時代に手がけたタグタイプという入力デバイスのハードウェア試作機をはじめ、有線放送向け向けのインターフェイスや、ドコモ向けなどソフトウェアの試作などハードとソフトの領域にとらわれない試作の数々の説明があった。また超撥水加工した紙皿の上を水がころころ転がるインスタレーションfurumaiなどアート作品的な展示やこの春ミラノサローネに出展した東芝のLEDライトのインスタレーションなど、実際の製品開発を離れた感性に訴えかけてくるような、展示の説明も多かった。


最後に交流会があり田川氏とお話する機会があった。
非常に気さくでオープンな方で、こちらの話に対してとってもレスポンス良く対応してくれた。引き出しの多さと速さに感心すると共に、誰とでも柔軟に打ち解けていくムードメーカー的な存在であることを実感した。きっとチームのリーダーとしてチーム内のまとめ役となり、相手先企業との交渉などを気持ちよくこなしていく人なんだろうと思った。
気さくでオープン、誰とでも打ち解けられる人柄と、ものづくりの領域にとらわれない専門知識、実際にモノを作り上げていく行動力、そして美しいものを見分ける感性、国際的な視点、様々な野力が一人の人間の中に融合された、新しいタイプのデザイナー像。


ものづくりの技術が発展し、スキルを持たない一般の人々にものづくりが開放されていくだろう。これからの時代のプロフェッショナル像を田川氏から学んだ。

田川氏から「フォークの歯は何故4本になったか」を紹介してくれました。
モノの成り立ちや歴史を知ることは、現代においてモノを作ることにも必要な知識なのだろう。