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デザイン探検家の記録

【書評】坂の上の雲

新装版 坂の上の雲 (1) (文春文庫)

司馬遼太郎の名作
幕末から明治のはじめに生まれ日露戦争で活躍した軍人、秋山兄弟とその青春群像を描く。


昨年末、NHKのドラマスペシャルでドラマ化された。
予算をしっかりかけた映像美、演出や衣装美術の緻密さは見ごたえがあった。
誰もがブロードキャストできる時代。
テレビ局などは上質なコンテンツ制作を手がけていかないと、
存在意義が薄れていくだろう。そんな中で、制作者の心意気を感じるドラマだった。



松山出身の秋山兄弟、兄・好古、弟・真之、そしてその友人・正岡子規の成長は
今の時代から見ると未知の出来事にあふれていてわくわくする。

明治軍人の国際感覚は現代においても勉強になる。
維新から世界の一等国を目指し、世界に認められるため国際法を厳守する軍人の姿。
欧米の文化を柔軟に吸収し、陸軍はフランス語やドイツ語、
海軍は英語やロシア語など語学の習得も貪欲に行う。
そして江戸から続く文化や教養の流れ。


例えば広瀬武夫は武官としてロシアの社交界で対等に渡り合い、
日本での海軍兵学校時代には柔道に明け暮れた。
柔道場で自身の気持ちを漢詩で歌うシーンなどは
国際社会を踏まえた上で、教養の深さを感じざるを得ない。



国際的な文武両道の姿は今の時代において学ぶ点が多い。



軍国主義を賛美は出来ないが、
戦争にモラルのあった時代。
自身の栄達と国の繁栄が一致した時代。


明治と昭和の軍の意識の違いもわかって面白い。


今の時代に一生を懸けて成すべき仕事とは何か?
現代の30代はこの小説を読んで、どんな行動を起こしていくのだろうか。

明治の勝利から昭和の敗北へ、近代日本の勃興を知る上で欠かすことの出来ない名作。