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デザイン探検家の記録

ものづくりの現場主義(シルク印刷編)


掲載した画像はアルファベット"A"の一部分を拡大したもの。
なぜこんな形になっているのか?

実はこの文字、身の回りにある携帯や電子機器などの工業製品の表面に入れる5ミリにも満たない小さな文字の一部なのです。
工業製品にはシルク印刷という手法を用いてプラスチックや金属の表面に文字を印刷します。
文字を転写したシルク版を作成し、そこに樹脂から落ちないインクを使って文字をスタンプする方法です。
簡単にいうと、プリントゴッコの要領です。

小さな文字の場合、穴が潰れたり、角の部分にインクが溜まり、シャープさが損なわれたりすることがあります。
そういった事態を防ぐ為に、シルク版を作る時点でインクの溜まりを考慮に入れて、わざと実際の文字とは違った形の文字を作成するのです。要するにインクの溜まりを考慮に入れた視覚補正を文字側に入れてあげるのです。

実際とは異なった形をした文字なのに、シルク印刷の工程を経ると実際の文字のように見える。
現場の中で生まれていった人々の知恵の不思議です。
小さな文字にも現場の工夫がある。
デザインを生業にしていると、普段見えてこないモノづくりの裏側が垣間見えてきます。