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デザイン探検家の記録

【書評】パッチ・アダムスと夢の病院 

パッチ・アダムスと夢の病院―患者のための真実の医療を探し求めて

パッチ・アダムスと夢の病院―患者のための真実の医療を探し求めて

副題、患者のための真実の医療を探し求めて
映画「パッチ・アダムス」の原作になった米国の医師パッチ・アダムス(本名ハンター・アダムス)の自伝的エッセー。
医療格差の激しい米国において、患者のために無料で診療を行ってきた著者。医学部時代から医師の権威主義や患者との距離に疑問を抱き、患者と同じ目線に立って、友として、ゲインズハイト・インスティテュート(ドイツ語でお元気で病院)で医療を行ってきた。


本書のはじめに
「健康になるためには、まず幸せになることである」とある。
病だけでなくだけを診るのではなく、全人的な医療を心がけ、患者の生活の質(QOL)もっと言うと人生の質を第一に考えている人の言葉だと思う。
そのために何が必要なのか、パッチは笑いだと考えた。
医大卒業後は家庭医として、病と闘うなかで気分が塞ぎがちな患者に対し、クラウンの格好をして笑わせたり、自らの病院を明るく愉快な場にしようと試みる。その夢に賛同した仲間たちとの奮闘の毎日。
さらに市民外交官としてクラウンになり、冷戦時代にソ連を訪問したりしている。国境や政治の壁を「笑い」や「ユーモア」によって飛び越えてみせる。無料診療の病院建設という夢の実現と、莫大な建設費用の調達を、彼の信念に妥協することなく歩んで行く彼の姿は、困難に立ち向かう人を勇気付けるだろう。


彼は全人的医療のなかで、患者と共感を分かり合うために芸術や自然、想像力の重要性を説いている。詩や絵画、音楽、美しいものには人を癒す力だ有るという。彼にとって、「外科手術用のメスや聴診器と同じくらい芸術は欠かすことの出来ないものである。」P.142とまで述べている。
人の心理的な状態が、病気や治癒力に影響してくる。
これは「生きがい療法」の伊丹先生も述べていた。

パッチの理想の医療を実現するために、医療の科学的な知識や技術と共に、芸術や自然、ユーモア患者と医師の接し方などなど、あらゆるアプローチで患者の幸せを実現しようとしている。

映画パッチ・アダムスを観たときは、人間の可能性について無限の広がりを感じることが出来た。この本を読み終え、その可能性はしっかりと夢を思い描き、実現に向け熟考し、本気で取り組んでいく生身のパッチ・アダムスを感じることが出来た。

私は病気持ちではないが、医師として、人として、パッチ本人に会ってみたくなった。



目次 [自己記入]

まえがき
謝辞
はじめに

序章 パッチ・アダムスとゲインズハイト・インスティテュートの歩み

第1部 医療にビジョンと喜びを

第1章 苦悩する現代医療システム
第2章 理想の医療 
第3章 ユーモアと癒し、そして夢の病院
第4章 芸術、自然、想像力
第5章 個人、家族、地域社会、そして世界との関係

第2部 夢の病院に向かって

第6章 形になった夢
第7章 ギャレスが語るゲンズハイト・インスティテュート
第8章 夢見る者たち
第9章 夢の建設
第10章 すべてのボランティアに告ぐ!
第11章 わたしにできること
第12章 情熱と不屈の精神
第13章 あれから五年の歳月が流れて

訳者あとがき