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デザイン探検家の記録

30km地点、涙のおにぎり

3/18、板橋cityマラソンを走った。


荒川の河川敷にある自転車道の往復コースで、
高低差がなく走りやすいため、記録を出すのには向いているそうだ。
この大会は豊富な補給も有名で35km地点ではシャーベットまで振る舞われる。


初めてのフルマラソン
2月に30kmの青梅マラソンには出場していたが、
後半走り続けられる自信はなかった。


曇り空の中のスタート。
最初は抑え気味にkm/6分後半くらいのペースで進み、
7km過ぎた辺りから徐々にペースアップしkm/6分で走る。
折り返して、25kmほどでペースが落ちはじめkm/7分位になって足が重くなっていく。
足が重く感じられてからは、走るのが辛くしんどいものになる。
一歩一歩が厳しさを増していく。
最初はサブ4を目標にと思っていたけど、全くとんでもない。


足が進まなくなってく30km地点。
小さな親指サイズのおにぎりの補給には涙が出た。


白ごまをまぶしたものを先ず一つ食べた。
お米が口の中にぱっと広がり、一瞬で塩分が身体に浸透していくのを感じる。
次に、しその粉「ゆかり」を振り掛けたものを口に入れた。
しその香り、米粒のひとつ一つの表面の滑らかな艶、塩分、
本能的に身体が欲しがっていたものに、瞬間的に反応する。
全身の細胞がダイナミックに歓び沸き立つような感覚。
理性で理解するよりも身体の反応スピードのほうが圧倒的に速い。


おにぎりを口に含みながら、また走る。
一口のおにぎりに、こんなにもエネルギーをもらえるとは思わなかった。
自然と力が湧いてきて、一歩一歩が辛い中でも、前進する意志の支えになる。


こんなにも「美味しい」お米は食べた事がないと思った。
お米がこんなにも心を勇気づけるものだとは思わなかった。


その前の補給ではパンやバナナなどのフルーツのおいしさも実感していた。
しかし、おにぎりは格が違った。
口に広がる米粒一つひとつが、塩が、身体にダイレクトに作用した。


一口のおにぎりにもらったエネルギーの大きさに感動して、
走りながら涙が出てきた。
汗で目がしみるような素振りをしながら泣き顔をごまかした。


このおにぎりの味を絶対に忘れまいと思った。
きっと生きていく上での基準になるだろう。


途中のおにぎりで涙があふれ出るくらい感動したのだから、
ゴールできたら感動もすごいだろうなと思いながら走り続けた。
進むごとに辛さは増していく。
最後は数百m走って少し歩いて、また走り出しての繰り返しになる。


もう、ゴールしたら声を出しておいおい泣いてやろう、と思いながら歯を食いしばる。
ところがゴールゲートが見えると、とにかく必死で、感動する余裕もなく、なんとかゴール。
ゲートを進み荷物置き場に向かい、着替えて、あっけなく、一人とぼとぼと駅に向かって歩いた。
タイムは自分の時計でなんとか5時間を切る程度。


最後はあの脚で良くゴールできたものだとは思いつつ、
おにぎりを食べたときが感動のピークだったことは自分でも意外だった。


結局、人も動物的な本能を持った生き物。
頭で考えたことよりも、身体にダイレクトに伝わる力のほうが、
より強い感動を覚えるものなんだなと思った。


小さなおにぎりは、
走り続ける勇気とエネルギーを与えてくれた。
「お米の力はすごい。」
そんな不思議なことを初フルマラソンで感じた。