夜中は風が吹き荒れた。
佐藤小屋の脇に張ったテントが壊れるかと思った。
富士山に登るために、しっかり早寝しようと思ったら風が吹き荒れ、
寝ているとバタバタ風でテントがななめになり、
仕舞いには『からんからん〜』と金属が転がる音。
聞こえなかった振りをして、寝ているとテントがめくれ上がって来て。。。
仕方ないので夜中に外に出て確認すると、
4本くらいペグがとれてそこら辺に転がっていた。
もう一度打ち直す。
シュラフにもぐり込む。
もうしばらくすると、また『からんから〜ん』とペグが飛ぶ音。
もう一度、外に出てピッケルやらでテントを確保し、シュラフにもぐり込む。
今度はズボンについた雪がシュラフの中で溶けて、ダウンがしっとり、ぺったり。
初日夜中の強風にもはや戦意喪失。
そんな思いで、うつらうつらしていたらなんと7時過ぎに目が覚めた。。。。。
登頂は無理な時間。心も折れているが、行けるところまで行く事に。
せっかくなので、エンジョイ指向。
7時半頃に5合目佐藤小屋から出発。
天気は快晴、風はまだ強い。
すぐに6合目、ここはまだ樹林帯なので雪が積もっている。
アイゼンを履く。
6合目の樹林帯を抜けると雪が無くなる。
ほとんど富士山独自の砂。所々凍っている。
アイゼンを脱ぐのも面倒なので、そのまま雪のある所を選んで歩く。
足下は雪と火山灰のミックス。
雪塵がまう。
突風で斜面に這いつくばって、顔が上げられないような時もある。
ゴーグルがあったので助かったけど、
無かったら突風が通り過ぎるまでずーっと目を開けられない、冬の富士は。
良く言われるが、富士山の吉田口登山道は下から見ると、
土砂滑り防止の堰や小屋がたくさんあってまるで要塞のようだ。
斜面は雪が飛んで氷がむき出しになっている。
私と同じようにソロで登る人もいる。
後ろから見ると結構絵になる。
雪の造形。
太陽照りつけ、雪と氷が輝き、美しすぎる。
自然の美には適わないなあとため息もの。
強風と前夜の疲れの中で、
もう少しもう少しと思いながら登っていたが。
12時になったのを言い訳に、8合目付近で下山する事に。
出発の時点で登頂は無理だし、心は折れていた。
今回の最高度はiphoneのGPSで計測した所、3251m。
まあ、日本で2番目に高い北岳3193mより高い所まで来たし、、とまたしても言い訳。
冷たく乾燥した空気が鼻の奥の粘膜にある湿気を奪っていく。
雪山の写真って遠近感がなくて、まるで抽象絵画のよう。
ロシアアバンギャルドもびっくり。
突風に時々、身を小さくしながら、下る。
くだる。
氷にアイゼンを引っ掛けて転んだりしながら、下る。
3時前には佐藤小屋まで下りて来た。
夕方、富士の上空に月が昇る。
富士山の強風を自分の身体で実感出来てよかった。
がっつりカレーを作ったり、ココアを飲んだり、団らんのとき。
いくら食っても余る位食べ物を持っていた。
でも、、、
前日夜中のペグ打ち直しで湿ったシュラフが凍っていて、、、
ついでにプラティパスに入れた水が凍らないようにと思って、
シュラフに入れて寝たら穴が空いていて水漏れ。
凍ったシュラフはさむかったなあ〜。
プラテパスはすごく長く使ったから仕方ないけど。
やっぱ穴があく前に変えないとダメですね。
富士詣でその2 おしまい。